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 斉の武帝の御世(483〜493)のことである。

 東山(注:江蘇省)の土中から不思議な物が掘り出された。形や色は人の唇に似て、その間から真っ赤な舌がのぞいていた。触ると妙な弾力があり、はなはだ気色が悪い。当地の役所を通じてこの不思議な物は帝に献上された。
 早速、帝は僧俗の学者を集めてご下問されたが誰もこれが何なのか答えられない。その時、法尚という僧侶が進み出て言った。
「これは生前、常に法華経を誦(ず)していた者のものと思われます。これこそ法華の教えに帰依した者の不滅の姿でありましょう。法華経を読むこと千度に満ちれば、その功徳(くどく)は自ずから顕われるということです」
 そこで、法華経を常々信奉している人々を集めて例の物を囲んで読経させてみた。すると最初の一声を唱え出すのに合わせて、その唇と舌も動き出して経を唱えるではないか。その動きがあまりにも生々しくて、これには居合わせた一同、奇跡に驚くというよりも身の毛のよだつような恐怖を感じた。
 後にこの次第を聞いた帝は詔を下して、例の唇を石棺に封印させた。

(隋『旌異記』)