粗末な月


 

 る男、人と話す時、何かと、
「粗末なもので…」
 と謙遜する。ある日、友人を招いて酒を飲んでいると、折よく月が上った。これには友人、大喜び。
「今宵は何と結構な月だ」
 すると、くだんの男、うやうやしくお辞儀をして、
「これはお恥ずかしい、うちの粗末な月にすぎませぬ」

(清『笑得好』)