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 邑(げんゆう、注:河南と山西の境)の人、韓萬象(かんばんしょう)は字を春宇といった。
 成年に達する前に郷里の推薦を受け、太原の傳潤野(ふじゅんや)の娘を妻に迎えた。それから十七年を経て萬象は進士となったのだが、すでに妻の傳氏は亡くなっていた。
 傳氏は生前、爪を長く伸ばすことを好み、鳳仙花(ほうせんか)で紅色に染めていた。最も長く伸ばしていた一本は折れてしまったが、納棺の際、ともに棺に納めた。
 萬象が休暇をとって家で過ごしていた時のことである。彼が昼寝をしていると、目の前に傳氏が現れた。生前と変わらない様子で笑いながら言った。
「お耳がかゆいみたいですわね。掻いてさしあげるわ」
 傳氏は長い爪を使って萬象の耳を掻いた。その途端、萬象は耳にかすかな痛みを感じて目覚めた。傳氏の姿は消えていた。
 不思議に思っていると、耳元に何か当たる感触がする。それは紅く染めた爪であった。傳氏の棺に納めたはずの爪が枕元に残されていたのである。

 棺の中にあるはずのものが、どうして枕元に残されていたのであろう?夢の中のものが、どうして実体を得たのであろう?いくら考えても解せない現象である。

(清『原李耳載』)