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帰ってきた夫


 

 寿之(とうじゅし)が誅殺された。家族は遠くに離れて住んでいたため、その事実を知らなかった。
 寿之の妻が夜、灯火と向かい合っていると、突然、夫である寿之が戸口から入ってきた。そして傍らに坐り、悲嘆に暮れた表情でため息をつくのであった。妻が、
「こんな夜分にどうして戻ってこられたのです?」
 と問うても、寿之は一言も答えず、ただため息をつくだけであった。
 寿之はしばらくすると、無言で立ち上がり、外へ出て鶏の籠の周りを回った。おびえた鶏のあげるけたたましい叫び声が闇夜に響いた。妻は異常を感じ取り、灯りを手に外に出てみたところ、寿之の姿はなく、鶏の籠のそばに数升もの血だまりが残されていた。
「あの人は死んだんだわ」
 そう思い至った妻は姑のもとに駆け込み、今見たものを告げた。家族は寄り集まって、突然の悲劇にただ泣くだけであった。

 夜明けになって、董寿之が誅殺されたとの知らせが届いた。

(六朝『捜神後記』)