解形民


 

 方に解形民というのがいる。落頭民と似たようなものなのだが、こちらはもっと凄い。何がすごいかと言えば、驚くなかれ、頭だけでなく左右の手も飛ばすことができるのである。つまり、頭は海へ、左手は東、右手は西へ、という具合に全てばらばらに飛んで行く。飛んで行った体の各部分は、夕方になると戻って来て元の部分に収まる。そういうわけで、この民は解形民と呼ばれている。

 ある解形民がいつものように頭と両手を飛ばした。頭はちゃんと戻って来たのだが、両手は途中で嵐に遭ってどこかへ飛ばされてしまった。

(唐『酉陽雑俎』)