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奇術


 

 の永嘉年間(307〜313)のことである。
 江南に天竺から一人の胡人がやって来た。この胡人は市中に現れて、不思議な術を見世物にした。断ち切った舌を元通りにしてみせたり、火吹きなどをやって見せたのである。これが爆発的な人気を呼び、市中の人士はこぞって見物につめかけた。
 見物人の見守る中、胡人はまず舌を出して見せてから、刀で断ち切った。おびただしい血が流れて足元に血だまりができた。これだけでもう気の弱い見物人は目を覆ってしまう。それから、断ち切った舌を皿に載せて、見物人に回し見させた。皿が一巡りして胡人のもとに戻されると、胡人はもう一度血まみれの口を開いて見せる。そして、その舌を口に含んでしばらく口をモゴモゴさせた。再び口を開いた時には、舌は元通りになっていた。
 時には見物人が真っ二つに断ち切った絹布を繋ぐこともある。胡人が絹布の切れ端をくっつけると、もう元通りになっているのである。見物人の多くは何か仕掛けがあるのだろうと疑って色々と試してみたのだが、見破ることはできなかった。
 火吹きには薬品を使う。まず特殊な薬品を器に入れ、火をつける。そこに黍から作った飴を加えて、口を近づけて何度か吸い込むと、口の中は炎でいっぱいになる。それを吹き出すのだから、壮観である。
 また紙や紐の類を火中に投じることもあった。燃え尽きて炎がおさまってから、まだ熱い灰の中に手を突っ込んで探る。そして、取り出して見せると、元通りのままであった。

(六朝『捜神記』)