離婚の理由


 

 原の陶丘という人が、渤海(ぼっかい)の墨台(ぼくだい)氏の娘を妻に迎えた。新妻は年若く美貌であっただけでなく、非常に聰明であった。夫婦は仲睦まじく、まさに幸せそのものの新婚家庭であった。
 息子を生んでから里帰りをすることになり、夫の陶丘が実家まで送っていった。母の丁氏はたいそう高齢だったのだが、娘婿が来たというのでわざわざ挨拶に出てきた。途端に陶丘は不機嫌になってしまった。
 彼は帰宅して早々、妻に離縁を言いつけた。その理由を問う妻にこう答えた。
「先日、お母上にお会いしたが、たいそう老け込まれ、昔の面影は微塵(みじん)もなかった。おそらくお前も年をとればああなるのだろう。親子だからな。だから、離縁したいのだ。他に理由はない」

(六朝『笑林』)