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こそ泥


 

 そ泥がいた。ある夜、迂公(注:ぼんやり先生の意)の家に盗みに入ったのだが、ちょうど戻ってきた迂公とばったり出くわてしまった。こそ泥はびっくり仰天して逃げだした。あまりに慌てていたせいか、よその家で盗んだ羊の皮衣を落としていった。迂公、それを拾い上げて着てみると、あつらえたようにピッタリであった。思わぬ儲けものをしたと喜んだ。
 以来、迂公は夜、戻ってくるたびに家に変事がないかと見回すのが習慣になった。何も起きてないことがわかると、眉間にしわを寄せてこう言うのであった。

「どうして今夜も泥棒が来ないんだ?」

(明『雅謔』)