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非凡な死


 

 飛が非業(ひごう)の死を遂げた後、その部下は離散した。優れた人材が揃っていたのだが、金との和議がなった以上、もう必要なくなってしまったのである。
 何宗元(かそうげん)もそうした武将の一人であった。彼は数多の戦功を立て修武郎にまで昇進していたが、突然、官を捨ててそのまま玉笥山(ぎょくしさん、注:江西省にある山)に入ると、山中の三会峰に庵を結んだ。そこはきこりや牧童も滅多に近寄らない寂しい場所であった。
 五年も経つと、近くの道観と往来するようになり、道士達とも親密になった。

 ある日、何宗元は道士達にこんなことを言った。
「明日、私は庵でちょっとしたことをいたします。もし私を訪ねて来られたら、まず石を叩いて知らせて下さい。私の答える声が聞こえたら、その時はどうか引き返して下さい」
 道士達はその意味をはかりかねたが、その通りにする、と約束した。
 その数日後、一人の道士が何宗元の庵を訪れた。言われた通り、石を三、四回叩いてみたところ、庵の中からは何の答えも返ってこなかった。あまりに静かなので、道士は恐ろしくなり、中の様子を伺うことなく引き返してしまった。
 さらに数日してから、今度はほかの道士達を連れて、もう一度庵を訪れた。おっかなびっくり庵の扉を開けてみた。

 驚いたことに何宗元はざんばら髪で死んでいた。死んでから何日経っていたのかはわからないが、残暑の頃にもかかわらず、その顔には腐敗の色はなくまるで生きているようであった。
 何宗元の死に様は十分に非凡なものといえるだろう。

(宋『独醒雑誌』)