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夫婦愛


 

 宋の劉廷式(りゅうていしき)はもとは百姓であった。若い頃、隣家に住む貧しい老人の娘と婚約した。
 数年後、刻苦勉励の末、廷式は見事科挙に合格した。郷里に戻り、隣家の老人を訪ねたところ、すでに老人は亡くなっていた。残された娘も病気のために両目の視力を失い、その暮らしは貧窮のどん底にあった。
 廷式は娘の家へ人をつかわして正式に結婚を申し込んだ。しかし、娘の家の方では、盲人な上に百姓の身分だから士大夫に嫁ぐことなどとんでもない、と辞退してきた。しかし、廷式は頑として引き下がらず、
「私は爺さんと約束したのだ。爺さんが死んだから、娘が盲人だからといってその約束に背くことができようか」
 と言い張った。そして、とうとう周囲の反対を押し切って、娘を妻として迎えた。
 その夫婦仲はいたって睦まじく、出かける時には必ず妻の手を引き、その目となり、杖となった。二人は数人の子供を儲けた。
 後に、廷式は些細な事件に巻き添えで連坐したのだが、妻を迎えた経緯を義と見なされて寛大な処置で済まされた。
 廷式が江州(注:江西省)の太平宮の管理官になった時、妻が亡くなった。その嘆きぶりは並たいていのものではなかった。蘇東坡は文を作って、その情けの深さをたたえた。

(宋『夢渓筆談』)