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花月の神


 

 安(注:現福建省)の章国老の夫人は宜興(注:現江蘇省)の潘氏の娘であった。非常な美貌の主で、章家からも潘家からも賞賛を浴びていた。惜しいことに章国老に嫁いで数年も経たないうちにみまかった。
 その臨終に際して、夫人の寝室におびただしい数の蝶が舞い込み、寝台の周りを乱れ飛んだ。後で知ったことだが、夫人が生まれた時にも同じようなことがあったとのことであった。
 祭壇を設けて遺影を広げると、その上に一匹の蝶が止まり、しばらくしてから飛び去った。
 以来、命日や一族の祭礼を行う際に遺影を広げると、必ず一匹の蝶がどこからか飛んでくるのであった。夏冬を問わず、蝶は飛んできた。
 家人は夫人の本身を花月の神ではないかと思うようになった。

 同じく建安の張伯玉は誕生する時には家中に鬼哭(きこく)が響きわたり、三日間やまなかったという。その臨終の際にも梁の上から鬼嘯(きしょ う)が聞こえ、遺体を納棺してようやくやんだ。
 聞くところによると、その母が黎山王廟(れいざんおうびょう)に子宝を祈願したところ、夢に黎山王が現れて傍らの鬼官を指し示して与えた。そうして生まれたのが張伯玉だということであった。

(宋『春渚紀聞』)