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どういたしまして


 

 陽(注:江西省)の[龍+共]勉仲(きょうべんちゅう)の何代か前の先祖の時、家庭内で数多くの怪異が起こった。めんどりが時を告げれば、犬が頭巾をかぶって歩き、鼠が昼日中から群れを成して姿を現した。
 続発する怪異に恐れをなした家人は、巫女の徐娘(じょじょう)を招いてお祓(はら)いをしてもらうことにした。徐娘は炉に向かって坐ったが、そのそばには猫が一匹寝ていた。
 家人がこの猫を指して、
「うちで妙なことをしないのはこの猫だけなんですよ」
 と云うと、突然、この猫は二本足で立ち上がった。そして、前足を拱(こまね)くと、
「どういたしまして」
 と人間の言葉を発した。徐娘は驚いて炉の前から逃げ出した。
 数日後、[龍+共]家の二人の息子が科挙に及第した。

 怪異が必ずしも凶兆というわけではないようだ。

(宋『墨客揮犀』)