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大宝珠


 

 が南唐を降した時のことである。進駐した大将が皇帝の寵姫(ちょうき)を捕らえた。寵姫は灯りを見るなり、
「けむたいこと」
 と言って目を閉じた。大将が奮発(ふんぱつ)して貴重品の蝋燭(ろうそく)にかえると、寵姫はまた目を閉じる。
「けむたくてたまりませんわ」
 不思議に思った大将は寵姫にたずねた。
「江南の宮中では灯りをつけないのか?」
 寵姫は答えた。
「宮中の本殿では夜になるといつも大宝珠(だいほうじゅ)を懸けておりました。その光は昼のように明るうございます」

 この一事で南唐の豪奢ぶりが想像されよう。

(宋『黙記』)