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嫁入り


 

 晋の太元年間(376〜396)、ある士人が娘を近隣の村へ嫁がせることになった。
 嫁入りの日、新郎の家から迎えを寄越してきたので、士人の方でも乳母に付き添わせて娘を送り出した。新郎の家に到着すると、重々しい門構えで、奥には楼閣の甍(いらか)が幾重にも連なり、まるで王侯の邸のように壮麗であった。長い廊下の柱にともされた灯火の下には美々しく装った下女が一人ずつ控えていた。洞房の帷幄(いあく)は非常に華麗であったが、誰の姿もなかった。
 夜になり、花嫁は不安にかられ、乳母にすがり付いて泣き出した。すっかりおびえきっており、口を利くこともできない。乳母がそっと帳の中を探ってみると、冷たいものに触れた。それは柱ほどの太さもある大蛇であった。
 大蛇は帳の間から姿を現すと、床を這いながらゆっくりと花嫁に近づいた。花嫁の方は縛られたようになり、動くこともできない。大蛇は花嫁 の体にその長い体を巻きつけた。乳母は洞房から駆け出し、助けを呼びに行こうとしたが、廊下に出て愕然(がくぜん)とした。
 控えているはずの下女の姿はなく、代わりに小蛇がとぐろを巻いていた。灯火に見えていたのは、小蛇の炯々(けいけい)と輝く双眸(そうぼう)であった。

(六朝『捜神後記』)