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水売り奇縁


 

 治年間(1644〜1661)はじめのことである。
 北京に趙遜(ちょうそん)という水売りがいた。まだ独り身だったので、友人が金を出し合って妻を買わせた。家に連れ帰って頭巾を取ってみると、何と白髪頭の老女であった。
 趙遜は申し訳なさそうに身をすくめる老女に優しく言葉をかけた。
「お婆さん、心配しないで。私は何もしませんから。これも何かの縁だ。私は早くに母と別れたから、お婆さんに母親になってもらいましょう」
 趙遜はこの言葉にたがわず、老女を母として敬った。老女は趙遜の思いやりに感激して、着物に縫いつけた袋から真珠を一粒取り出した。
「あなたは本当に心根の優しいお人だね。さあ、この真珠をお金に換えてお嫁さんを買いなさい。せめてものご恩返しですよ」
 数日後、趙遜は若い娘を買って連れ帰った。娘は老女の姿を見るなり抱きついた。
「母さん!」
 何と老女の実の娘であった。母娘は兵隊にさらわれて離れ離れになったが、偶然にも趙遜に買われて再会を果たしたのであった。

 老女は趙遜を娘と結婚させると、身の上話をはじめた。自分たち母娘の故郷は洪洞(注:現山西省)で、そこには息子が二人いる。まだ何粒か真珠があるので、それを売って三人で故郷に帰ろう、と言うのである。
 三人が故郷に帰ってみると、二人の息子は健在であった。老女は財産を趙遜と二人の息子に分け与え、皆で仲良く暮らした。

 この話を伝え聞いた人々は趙遜の思いやりがもたらした幸運だと言った。

(清『香祖筆記』)