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人魚


 

 道という人が高麗(こうらい)へ使者として遣わされた。その途中、船が一山のそばに停泊した。ふと見ると、浅瀬で一人の婦人がぐったりとしていた。婦人は紅い裳(も)だけを着け、むき出しにした両の肩に乱れた髪の毛がかかっている。肋(あばら)の脇には紅い鰭(ひれ)のようなものが見えた。
 査は水夫に命じた。
「あのご婦人を水に入れるよう棹(さお)で助けてやりなさい。くれぐれも傷つけないように」
 婦人は水に入ると、水面から上半身を伸ばして査に向かって何度も手を合わせてから水中に没した。
 水夫が、
「長いこと船に乗っておりますが、初めて見ました。一体、何でしょう?」
 とたずねると、査は言った。
「あれは人魚だ。人とつがうこともある。水族ではあるが、その生態は人と何ら変わるところはない」

(宋『祖異志』)