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試哭(しこく)


 

 末のことである。
 沈汾(しんふん)は官を辞してからは、二人の妾を相手に悠々自適の隠居生活を送っていた。
 ある日、沈汾は妾たちにこのようなことを言い出した。
「ワシが死んだら泣けるか?」
 妾たちは驚いて、
「まあ、どうしてそんな縁起でもないことを?」
 と眉をひそめ、答えるのを避けた。沈汾はそれでも何度も、
「泣けるか、泣けるのか?」
 とたずねる。妾の一人が、
「もしそのようなことになったら、泣かないはずがありましょうか」
 と答えると、沈汾は、
「なら、試しにここで泣いてみよ」
 と言う。妾たちが縁起でもないことだから、と泣こうとしないのを、沈汾は、
「泣いてみよ」
 の一点張りで、許そうとしない。仕方なく、妾たちは沈汾を榻(ねだい)に坐らせ、袂(たもと)で顔を覆って泣き出した。
「これでよろしいでしょうか」
 しばらく泣いた後、妾たちは顔を上げた。榻の上の沈汾はすでにこと切れていた。

(宋『江淮異人録』)