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桃妖


 

 定(かてい、注:現在の上海付近)外岡鎮(がいこうちん)の徐朝元の家の庭には古くから一本の桃の木があった。徐の妹は十五歳の可憐な美少女で、いつも洗った肌着をこの桃の枝にかけて干していた。

 ある日のこと、妹がいつものように肌着を干しているところへ、一人の青年があらわれた。すらりとした水もしたたるような美青年で、妹に向かって誘いかけてきた。妹の方でも好ましく思い、わりない仲となった。
 それからというもの、妹の美貌は花開くように艶やかさを増し、妖しい色香を漂わせるようになった。そして、いつも恍惚とした表情を浮かべてい た。
 不審に思った家族がひそかにその行動を見張っていると、どうやら桃の木の精に憑かれたらしいことがわかった。家族は桃の木を鋸(のこ)で切り倒した。切り口からはおびただしい血が流れた。
 木が切り倒されたのと同時に、妹も地に倒れた。助け起こしてみると、すでにこと切れていた。

(清『履園叢話』)