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踏揺娘


 

 斉に姓を蘇という男がいた。醜いあばた面をしており、官位についていないのに郎中と称していた。酒びたりで酔っ払うたびに妻を殴った。妻は美人で歌がうまく、いつも近所に夫の仕打ちを泣きながら訴えた。
 人々はこの様子をまねて歌った。それは男が女の衣装を身につけてゆっくり歩きながら歌うものであった。一番歌うごとに傍らの人が声を揃えて唱和した。
「踏揺娘(とうようじょう)、踏揺娘、つらいよなあ、つらいよなあ」
 妻が泣きながら訴える際、いつも体を揺すって足を踏み鳴らしたので「踏揺」といい、罪もないのにと泣きながら訴えるので「つらい」と歌ったのである。続いて夫に扮した男が登場して殴り合いの様子を演じると、人々はどっと笑った。

 今では女が演じることもある。

(唐『教坊記』)