鸚鵡と天神


 

 鵡(おうむ)がよその山へ遊びに行った。すると、その山の動物達は鸚鵡を珍しがり、非常に大事にしてくれた。鸚鵡は考えた。今は確かに楽しい。しかし、この楽しみがいつまで続くだろう。そう考えて、山から去った。
 数ヵ月後、山は大火事に見舞われ、遠くにいる鸚鵡にもその様子が見えた。鸚鵡は水に飛び込み、羽を濡らすと、山へ飛んで行った。そして、火元に向けて羽を振るって、水しぶきをちらした。小さな鸚鵡の体で何ができるだろう。わずかな水しぶきは火に届く前に、蒸発してしまった。鸚鵡は水と山の間を何度も往復した。
 天神が見かねて言った。
「鸚鵡よ、そなたに志があろうとも、その小さな体でどれほどのことができようか」
 すると、鸚鵡は答えた。
「私に火を消すことができないのはもとより承知でございます。しかし、かつてあの山へ遊びに行った時、動物達は私に親切にしてくれました。兄弟のような彼等を見捨てることなどできません」
 天神は鸚鵡の心根を嘉して、山の火を消してくれた。

(六朝『異苑』)