游仙枕


 

 西方の亀茲国(くじこく)が貢物として枕を一つ、献上した。
 色は瑪瑙(めのう)のようで、玉のようになめらかで潤いがある。形はしごくあっさりとしていた。これに頭をのせて眠れば、夢に十洲や三島、四海に五湖など神仙の住まうところが現れるという。玄宗皇帝はこの枕を「游仙枕(ゆうせんちん)」と名づけた。
 後にこの枕は楊貴妃の従兄の楊国忠(ようこくちゅう)に下賜された。

(五代『開元天宝遺事』)