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うわさ


 

 慶二年(1568)の正月十二日、妙なうわさが流れた。朝廷が天下に美女を求め、十三歳以上の娘が結婚することを禁じるというのである。
 年頃の娘を持つ親たちはにわかに浮き足立った。もしも娘が後宮に入れられでもしたら、里帰りはおろか一生対面することもかなわない。そうなる前に娘を片付けてしまわねば、とあわてて婿を捜し求めた。条件も何もあったものではない。選んでいる余裕などないのである。
 門のすき間から通りをうかがい、独り身とおぼしき少年が通りかかると有無を言わさず連れ込んで娘と結婚させた。白昼堂々の少年略奪は数日間続いた。
 その後、うわさは立ち消えとなったのだが、どうしてこういううわさが立ったのかはわからなかった。

(明『戒庵老人漫筆』)