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閻氏の犬


 

 武(現河南省)に閻(えん)という老人の一家が住んでいた。兵乱に遭い、閻老人夫婦はそろって家の土塀の下で命を落とした。息子達は捕虜として連れ去られ、亡骸(なきがら)は埋葬する者もなく放置された。
 当時、放置された亡骸が野を覆い、狐や犬のあさるにまかせられた。亡骸のほとんどが食い荒らされ、誰のものか判別もつかなくなっていた。
 閻氏では犬を一匹、飼っていた。老人夫婦の死後、野に出ては人の亡骸を食らって生き延びていた。しかし、不思議なことに閻老人夫婦の亡骸だけは食おうとしない。この犬は老人夫婦の亡骸をしっかり守り、よその犬が近づくと死に物狂いで撃退した。
 一月あまりして老人の甥が逃げ戻って来た。犬が亡骸を守っていたおかげで、老人夫婦の亡骸を埋葬することができた。

(金『続夷堅志』)