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剛 直


 

 州に龔(きょう)某という人がいた。常々、剛直をもって己が信念としていた。某には息子が三人と孫が一人あり、暮らしぶりは豊かであった。
 ある夜、某は夢を見た。厳しい神人が尊大に階から見下ろしていた。神人はこう言った。
「汝の住まいの裏手が空き地になっている。そこに余の廟を立て、像を安置せよ」
 某は憤激した。神人だからといって、勝手に人の土地を取り上げてよいものか。そう思った彼は叱咤してこの要求を退けた。
 すると、神人はこう言った。
「ならば、余は汝から長子を取り上げよう」
 果たして三日後、某の長子が亡くなった。
 またもや神人が夢に現れた。
「余の求めに応ずる気になったか?もし、従わぬのなら、汝の次子を取り上げるぞ」
 某は叱咤した。三日後、今度は次子が亡くなった。
 再び神人が夢に現れた。
「今度こそ応ずる気になったか?従わぬのなら、今度は末子を取り上げようぞ」
 某はその要求を退けた。三日後、末子が亡くなった。
 その後、神人がまたもや夢に現れた。 「汝の三子はすべて死んだが、まだ孫が残されているな。これが最後だ。土地を余に与えよ。従わぬのなら、孫を取り上げるて汝の血統を絶やすぞ」
 某は神人の脅しに屈せず、要求を退けた。すると、神人は階(きざはし)を降りると、某を拝した。
「三子の死は天命です。私が何かしたわけではございません。あなたの剛直には、まことに頭が下がる思いです」
 そう言って姿を消した。

(宋『捜神秘覧』)