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 州(らいしゅう、注:現山東省)に徐という人がいた。名前は忘れたので、官職をとって徐郎中と呼ぶことにする。
 二十歳の時、父に従って嶺外(れいがい、注:現広東・広西地区)の地へ赴いた。
 乾興元年(1022)、仁宗皇帝が即位した。徐郎中は祝賀の式典に出席するため上京した。その途中、武陵(ぶりょう、注:現湖南省)の宿場に泊まった。
 徐郎中が宿舎に入って休もうとすると、応対に出た小役人が言った。
「ここにはもののけが出るので、誰も泊まろうとしません。どうかよそへお泊まり下さい」
 徐郎中はこの話を信じはしなかったが、結局、役所の一室に泊まることにした。
 その夜、徐郎中は叱咤されて目を覚ました。
「その方は何者ぞ?このようなところに寝て、余の通行を妨げるつもりか」
 目の前には厳しい神人が立っていた。手には竹篭を下げており、中身はすべて人の鼻であった。
 徐郎中は恐れかしこまり、許しを乞うた。すると、神人は徐郎中の顔をジッと見つめてこう言った。
「ふうむ、悪くない面相じゃ。ただ、鼻が曲がっていて小さいのが難じゃのう。よし、つけかえてやろうぞ」
 そして、竹篭の中から鼻を一つ選び出した。
「これがよかろう」
 いきなり徐郎中の鼻を削ぎ落として投げ捨てると、そこへ新しい鼻をつけた。神人はしっかりつくよう、鼻の周囲を指で念入りにおさえた。これが徐郎中には痛くてたまらなかった。
「立派な正郎の鼻じゃ」
 神人が笑いながらそう言った途端、またもや目が覚めた。すべては夢であった。鼻に違和感があるので鏡を見てみると、果たして鼻はすっきりと高くなっていた。

 後に徐郎中は駕部郎中にまで出世した。

(宋『括異志』)