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海 獣


 

 隆五十九年(1793)六月一日、海塩(現浙江省)の八団地方に大量の雹が降った。

 潮が引いた後、浜辺にできた水たまりに一頭の海獣が取り残されていた。体長は八尺(当時の一尺は約32センチ)あまり、色は真っ黒で、毛はラッコに似ているが、一尺ほどの尾には毛がない。四足は魚のヒレのよう で、頭は駱駝(らくだ)に似ている。目や口は赤かった。
 棒で殴りつけたが、痛みを感じないようであった。刀を見せると、海獣はポロポロと涙を落とした。
 見物に集まっていた住民数百人は、海獣が涙を流すのを見て口々に、
「殺すのはかわいそうじゃ」
 と言い、皆で海獣を海辺まで担いでいった。海獣は海に飛び込んで泳ぎ去った。

 一体、いかなる生物なのであろうか?ここに書き記し、識者の判断を乞う。

(清『履園叢話』)