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身分


 

 州(こうしゅう、現山東省)のある寺の経楼の裏手に菜園があった。
 ある蒸し暑い晩のことである。僧侶の一人が経楼の窓を開け放ち、夕涼みとしゃれ込んでいた。月が明るくてまるで昼間のようであった。その月明かりの下、誰かが菜園の木にもたれかかっているのが見えた。てっきり野菜泥棒と思った僧侶が、
「何者だ!」
 と大声で叱りつけたところ、その人は恭しい態度で答えた。
「師父(しふ)殿、疑われますな。私は幽鬼です」
「幽鬼ならどうして自分の墓に帰らぬ?」
「幽鬼にも生前の身分に見合った集団がありましてね、それぞれふさわしい仲間と行動するのです。私は生前、書生だったのですが、不幸にも馬医や労働者の墓の間に葬られました。あまりにも身分がかけ離れているので、私はあの輩の仲間には入れないし、またあちらも私のことをひどく煙たがりましてね。そりが合わないので、ここで面倒を避けているのです」
 言い終わると、幽鬼の姿は徐々に消えていった。

 その後もこの幽鬼の姿を見ることはあったが、呼びかけても返事はなかった。

(清『閲微草堂筆記』)