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幼 い 恋


 

 太守が職を辞して故郷の紹興(しょうこう、現浙江省)へ戻った。太守には十二歳になる息子があり、非常に聡明であった。
 ある日、蕭山(しょうざん)に嫁いでいた姉が太守のもとを訪れた。姉は十四歳の小間使いを連れて来ていたが、太守の息子が一目でこの小間使いを気に入ってしまった。飲食から寝起きまですべてこの小間使いの世話でなければ、受け付けなくなった。小間使いも嬉しそうに息子の身の回りの世話をし、二人はちょっとの間も離れなかった。
 数ヶ月して清明節(春分から十五日目)を迎え、姉は蕭山へ墓参りに戻ることになった。小間使いを連れて行こうとすると、息子が抱きついて離れようとしない。小間使いも悲しそうにすすり泣くばかりであった。皆は子供同士、離れるのが寂しいのだろう、ぐらいに思って気にも留めなかった。
 出発の前夜、三更(夜中の十二時)を回った頃、大風が吹いて門をガタガタと鳴らした。家人が用心のために見に出てみると、門の扉が開き、小さな足跡が残されていた。足跡は河まで続き、岸辺には息子の履(くつ)が落ちていた。
 急ぎ戻って息子の部屋を見てみれば、婆やがいるだけで息子の姿はどこにもない。小間使いの様子を見に行くと、これもいなくなっていた。
 河を浚(さら)うと、息子と小間使いの遺体が見つかった。二人は固く抱き合い、互いの服のボタンをかけ合い、何があっても離れないようにしてあった。
 太守は深く悲しみ、二人を同じ墓に葬った。

 以来、二人が身を投げた河辺に咲く蓮は一つの茎に二つの花をつけるようになった。

(清『耳食録』)