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蜀の山鬼


 

 には山鬼(さんき)が多い。
 ある小役人が同僚数人とともに上司の車を迎えに赴いた。日暮れ近く、小川のそばを通りかかると、若い女が手桶で水を汲んでいた。小役人はのどが渇いていたので、女に頼んで水を飲ませてもらった。近くで見て気づいたのだが、女はなかなかの美形であった。
 小役人にふと好き心が芽生えた。好色な言葉を口にしながらしなだれかかっても、女は嫌がる風も見せず笑っている。これに気をよくした小役人、今度は女を引き寄せてその懐に手を差し入れて仰天した。
 何と剛毛が生えている。見れば、女の胸元には黒々とした剛毛がふさふさと生えていた。
「キャアッ!」
 小役人は悲鳴を上げて逃げ出した。女はケラケラと笑うと、手桶を下げてゆっくりと歩き去った。

(宋『睽車志』)