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承 天 寺


 

 建省泉州の承天寺には不思議な遺跡が数多く残されている。
 寺内に残された九十九の井戸は言い伝えによれば、一人の僧侶がある志を抱いて掘ったものだという。百の井戸を掘って吉兆とするつもりだったが、あと一つというところで力尽きて中断した。今では井戸の上には石塔が数基建てられている。塔の上にはいつも蝿が集まっているのだが、みな頭を下に向けている。不思議なことに頭を上に向けているものは一匹も見られない。
 不思議なものに山門の梅花石(ばいかせき)がある。平らで表面はつややかであるが、石の中に一枝の梅の影が見える。花が開く時には石中の影も花開き、芽吹く時には影も芽吹く。実が成る時には、影も実をつける。花も葉も実もすべて落ちると、石中の影も枯れ枝だけになる。
 また、寺内には魁星石(かいせいせき)と呼ばれる石が残されている。近くで見ると何の変哲もない石である。しかし、遠くから眺めると石の上に淡い墨で描かれた魁星図が浮かび上がって見える。魁星とは北斗七星の柄杓の頭部のことである。雨が降りそうな時には石の上に水滴がにじみ出るのだが、魁星の形に沿ってにじみ出るという。

(清『帰田瑣記』)