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占い


 

 海(注:現山東省)の任[言羽](じんく)は十年もの長い間従軍し、ようやく帰宅できることになった。帰還に際して、占い師にこう言われた。
「建物でなければ宿るな、食事時でなければ沐浴(もくよく)するな」

 任[言羽]は仲間数十人とともに帰還の途についた。
 夕暮れ時に突然激しい雷雨に襲われ、前に進むことができなくなった。ちょうど岩が屋根のように突き出したところがあったので、そこで雨宿りをすることにした。任[言羽]は占い師の言葉を思い出し、ただ一人荷物を担いだまま降りしきる雨の中に残った。
 突然、岩が崩れ落ち、雨宿りをしていた仲間は全員死んでしまった。

 任[言羽]が帰宅したのは夜ふけであった。
「疲れたからもう寝るよ」
 と言って、旅装を解いて休もうとする夫に妻は、
「あなたまずは沐浴して旅の埃を落としたらいかが」
 と言ってさかんにすすめた。
 実は夫の不在中、妻には情人ができた。妻は邪魔になった夫を亡き者にしようと、情人と計画を立てた。夫を沐浴させ、濡れた髪をしるしに情人に殺させようというのである。
 任[言羽]はこの時も占い師の言葉を思い出し、何度勧められても沐浴しなかった。
「せっかくお湯をわかしたのに」
 妻は腹を立てて自分だけ沐浴した。そして、夫婦枕を並べて寝た。
 その夜、妻の情人は任[言羽]の家に忍び込んだ。かねてからの打ち合わせどおり、濡れた髪をしるしに妻だとは気づかないまま首を切り落として立ち去った。

(六朝『異苑』)