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青 い 鳥


 

 稽(かいけい、現浙江省)[炎刀](せん)県に袁相(えんしょう)と根碩(こんせき)という人がいた。

 ある日、連れ立って狩りに出かけ、山の奥深くへ分け入ったところ、山羊の群れを見つけた。その後を追って行くうちに、断崖にかかる石橋を渡った。断崖は険しくそびえ、石橋から下をのぞくと目がくらむほどであった。山羊は切り立った崖へと向かって行った。崖は赤い色をしており、細い滝が流れ落ちていた。山羊は崖にぽっかりと口を開けた洞窟へと入って行った。二人も山羊に続いて洞窟に入ると、中は広々と開け、芳(かぐわ)しい草花の香りが漂っていた。

 一軒の小さな家があり、女が二人いた。女達は年の頃は十五、六で、たいそう美しく、青い衣をまとっていた。二人の姿を見ると、うれしそうに迎え出た。

「ずいぶん前からお待ちしておりましたのよ」

 そう言ってそれぞれ夫婦となった。

 数日後、二人の女は、

「私達のようにお婿さんを迎えた人がおりますの」

 と言って、どこかへ出かけて行った。

 その留守中、袁相と根碩は履(くつ)をつっかけて、滝のそばを歩いていたが、聞こえてくるのは鳥のさえずりばかりであった。二人はそぞろ家が恋しくなった。こっそり逃げ帰ろうとしたところ、女達が追って来た。

「どうぞ、お好きになさって」

 女達は引きとめようとせず、巾着をくれた。その際、こう戒めた。

「絶対に開けてはなりませんよ」

 袁相と根碩は無事に帰宅したが、何ら変わったことは起こらなかった。

 ある日、根碩の留守中に、家族が巾着を開いた。巾着は蓮の花のように幾重にも重なっていた。最後の五枚目を開くと、小さな青い鳥が現われて飛び去った。根碩は戻ってからこのことを知ったが、すでに手遅れで、がっかりするばかりであった。

 しばらくして、根碩は畑に出た。家族が昼飯を運んで行くと、根碩が畑の中で身動き一つせず突っ立っている。そばに行って見てみれば、すでに魂が抜けていた。

(六朝『捜神後記』)