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乳を買う


 

 川(とくせん)の周なにがしは五十歳を過ぎても子宝に恵まれず、妾を迎えた。数年後、妾は男の子を産んだ。周の喜びようは尋常ではなかった。しかし、妾は体が弱く、乳の出も悪かったので、子供のために乳母を雇い入れた。

 ある日、妾は突然、わけのわからないことを言い出した。

「ワシが冥土の役所に大枚をはたいてせっかく孫を買ってやったというのに、自分で乳をやらずに、乳母を雇うのか!」

 その声は周の死んだ父にそっくりであった。そこで、周が妾の乳の出が悪いことを説明すると、

「それなら簡単だ。あの世で乳を買ってやろう。乳母には明日にでも暇を出せ」

 と言って、紙銭を大量に焼くよう命じた。

 翌日、妾は意識を取り戻し、その両の乳房からは乳がほとばしり出た。乳母は解雇された。

(清『履園叢話』)