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船 幽 霊


 

 明(現浙江省)の鄭邦傑(ていほうけつ)は高麗(こうらい)や日本との交易を生業(なりわい)としていた。

 ある晩、船で海上を進んでいると、遠くから銅鑼(どら)や太鼓の音が聞こえてきた。音はだんだん近づいてくる。甲板に出てみれば、一艘の巨大な船がこちらに向かって突き進んでくるのであった。無数の旗がひらめき輝き、船べりでは数百もの人が叫び声を上げながら櫂(かい)をこいでいた。船は見る見る近づいてきた。もう少しでぶつかりそうなところまで来ると、水中に沈んでしまった。やがて半里ほど先に再び姿を現わしたが、船べりの人々は何事もなかったかのように船をこぎ続けていた。
 船頭が言った。
「あれは船幽霊(ふなゆうれい)ですよ。ここで溺れ死んだ者達です。これが現われたからには、今回の交易はうまくいかないでしょう」
 鄭邦傑はそのまま船を返した。

(宋『[目癸]車志』)