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 文和公は、その晩年、己を抑えてわざと愚かに振る舞った。人が何か言うと、必ず、
「それはよかったのう」
 と答えるようにしていた。
 ある日、下役の一人が休暇を願い出た。理由を問うと、
「父の訃報に接しまして」
 とのこと。公はいつもの癖で、
「それはよかったのう」
 と答えた。
 その場に居合わせた者は笑いを噛み殺すので大変だったが、公は気付かなかった。

(清『嘯亭雑録』)