九 夫 墳


 

 容県(こうようけん、現江蘇省)の南郊に九夫墳(きゅうふふん)がある。
 言い伝えによれば、昔、美しい女がおり、子を一人産んだ後、夫に死なれた。家は豊かであったので、新たに夫を迎えて一子をなした。まもなく、新しい夫も亡くなり、前夫の墓の傍らに葬られた。次にまた夫を迎えたが、子をなした途端、死んでしまった。
 このようにして、女は九回結婚して、九人の子をなし、九人の夫を亡くした。九つの墓がずらりと並んで環となった。やがて女も亡くなり、墓の環の中心に葬られた。以来、毎日、日が沈むと墓の間からすさまじい陰風が吹き起こり、夜通し言い争う声が聞こえるようになった。まるで、九人の夫達が妻を取り合っているかのようであった。おかげで人の往来も絶えてしまい、近隣の村は役所に何とかしてくれ、と訴え出た。
 県令の趙天爵(ちょうてんしゃく)は早速儀仗(ぎじょう)を整えて墓に赴いた。そして、部下に命じて大きな杖でそれぞれの墓を三十ずつ打たせた。

 これを境に、怪しいことはふっつり絶えたという。

(清『子不語』)