心 中
ある男、妓女とねんごろになったが、身請けすることができない。そこで、せめてこの世で結ばれないのなら、あの世で一緒になろう、と心中することにした。 二つの盃に毒酒を盛り、いざ飲み干そうという時、妓女が言った。 「主(ぬし)さん、お先にどうぞ」 男は一気に飲み干すと、 「さあ、お前も」 と促した。すると、妓女、盃を男の方に押しやって、 「わちきは不調法でありんす。わちきの分も、主さん、飲んでおくれやす」 (明『精選雅笑』)
ある男、妓女とねんごろになったが、身請けすることができない。そこで、せめてこの世で結ばれないのなら、あの世で一緒になろう、と心中することにした。 二つの盃に毒酒を盛り、いざ飲み干そうという時、妓女が言った。 「主(ぬし)さん、お先にどうぞ」 男は一気に飲み干すと、 「さあ、お前も」 と促した。すると、妓女、盃を男の方に押しやって、 「わちきは不調法でありんす。わちきの分も、主さん、飲んでおくれやす」
(明『精選雅笑』)